源泉徴収は義務なのか?未納付だと脱税で追徴課税もあるので経営・起業初心者は要注意!
「源泉徴収」という言葉は、法人・個人問わずどなたも一度は聞いたことあるがありますよね!でも、それが何かと聞かれると、実は自分も正確には把握していない…という方が多いのではないでしょうか。そして身近な言葉でありながらも実は落とし穴が多くあることに気付いている方は少ないです。
源泉徴収の範囲はどこからどこまでなのか、納め忘れたらどうなってしまうのかなど知ってそうで実は知らなかったことをわかりやすく解説します。また、源泉徴収して毎月納めている方にその時間を大幅に短縮する裏技なども併せて解説します。
源泉徴収とは
源泉徴収は給料・報酬などの支払いに関して発生する税金を、その支払者があらかじめ差し引くことを言います。その後、支払者は差し引いた金額(源泉所得税)を国に納めます。
源泉徴収する支払いで比較的馴染みのあるものは給料、税理士や弁護士等への報酬、フリーランスへの報酬、株の配当、利子などがあります。
基本的には個人へ支払う際に発生するので、対象になる場合は注意してください。また、源泉所得税は所得税率と復興特別所得税率の両建てで計算されます。
※所得税率は100万円までの金額には10%を、100万円を超える部分には20%を乗じて計算する。
源泉所得税を構成する復興課税とは
復興特別所得税と呼び平成25年1月1日~平成49年12月31日までの期間、源泉徴収をする際に「復興特別所得税」も併せて徴収します。
これは東日本大震災が起因となり生まれた税金です。具体的には100万円までの金額には0.21% 100万円を超える部分には0.42%の税率がかかります。
例)原稿料150万円を個人に支払う場合⇒
①100万円×10%(所得税率)×0.21%(復興特別所得税率)
+
②30万円 ×20%(所得税率)×0.42%(復興特別所得税率)
=①(102,100円)+②(61,260円)
=163,360円 が、源泉徴収税額となります。
源泉徴収義務者とは
源泉徴収の義務は基本的に支払者にあります。特に注意したいのが、従業員ではなくフリーランスなどに支払うケースです。
外注費も源泉徴収対象!?
調査が入った時にまず目をつけられるのが外注費です。この外注費が実質給料なのではないかと指摘され、その分にかかる源泉徴収をしていない事から追徴課税がかかる場合があります。では外注費と給料は何が違うのでしょうか。それは「請負契約書」の有無と仕事にかかる備品等の「自社負担」の有無です。
請負契約書の作成と、仕事上の備品や道具を相手に用意させるのは外注費として計上するための基本になります。源泉徴収義務者に当てはまらないケース、源泉徴収の義務がない場合もあります。
- 常時2人以下で家事使用人だけに給与等を支払っている人
- 給与などの支払いがなく、弁護士報酬などの「報酬・料金等」だけを支払っている人
このいずれか場合は義務がありません。要は個人事業主で自分以外誰も雇っている人がいなければ基本的には徴収義務がないのです。しかし、ホステス等に対する報酬の支払いは源泉徴収の義務がありますので気を付けてください。
源泉徴収額の税率と計算方法
税理士や弁護士等に支払う場合や、フリーランスなどに支払う原稿料に対する源泉所得税の計算は上記に挙げた方法で行います。
それ以外の報酬に関しての計算方法は以下になります。
支払い対象者 | 計算方法 |
---|---|
司法書士等 | (支払額-1万円)×10.21% |
外交員等 | (支払額-12万円)×10.21% |
ホステス等 | (支払額-※1)×10.21% |
広告宣伝にかかる賞金等 | (支払額-50万円)×10.21% |
※1 5,000円×計算期間の日数(ホステス等に支払う金額の計算の基になった期間の初日から末日までの全日数)
源泉徴収の納期と、支払わなかった場合の罰則
源泉所得税の納付方法は2通りあります。
- 所得税徴収高計算書(源泉所得税の納付書)を用いて最寄りの金融機関などで現金納付
- e-Taxを使った電子納付
この2つの納付方法どちらか自分に合った方を選んでいただき納めます。納付書に関しては納税地の税務署に行くことで受け取ることができます。
納期に関しては基本的に支払った月の翌月10日までです。なお、10日が土日・祝日に被る場合、その休日明けの日が納付期限となります。例えば6月20日に給料を支払ったら、その時源泉徴収した税金は7月10日までに支払うことになります。
この時、6月中に報酬等を支払った場合、その時徴収した源泉所得税も7月10日までに合わせて支払います。期限までに支払うことができなかった場合、罰金が発生します。この際発生する罰金は不納加算税と延滞税です。
不納加算税とは納めなかったことにかかる税金で、延滞税は期間を過ぎた日数にかかる税金です。不納加算税に関しては免除される場合があります。
- 納めるべきだった税金が5,000円未満
- 過去1年に納付が遅れたことがなく、期限から1か月以内に納付
この場合は免除される可能性がありますので税務署で聞いてみましょう。
源泉徴収の良くある疑問
通勤手当は源泉徴収の対象になる?
給料を支払う際に交通費も合わせて支払う場合があります。この時、交通費にかかる金額が源泉徴収の対象にならないことがあります。これに関しては国税庁で定めているので表にします。
片道の通勤距離 | 1か月当たりの限度額 |
---|---|
2キロメートル未満 | (全額課税) |
2キロメートル以上10キロメートル未満 | 4,200円 |
10キロメートル以上15キロメートル未満 | 7,100円 |
15キロメートル以上25キロメートル未満 | 12,900円 |
例えば通勤範囲が5キロメートルで交通費を毎月5,000円支給している場合、源泉徴収される部分は800円についてで、4,200円に関しては非課税となります。
退職金は源泉徴収の対象になる?
退職金に対しても源泉徴収はされます。退職する人から「退職所得の受給に関する申告書」を貰っていない場合は退職金に一律20.42%を乗じた金額が源泉徴収されます。
申告書の提出を受けている場合、例えば退職金の支給額が800万円で勤続年数が10年4か月の人の場合
①勤続年数は11年(1年未満の端数は切り上げ)
②退職所得控除40万円×①=40万円×11年=440万円
③課税退職所得金額=(退職金-②)×1/2=180万円
④税額=(③×税率-控除額)×1.021=180万円×5%×1.021=91,890円となります。
基本的な退職金に対する源泉徴収の計算方法はこちらになりますが、貰う金額により変動する場合がありますのでその際には再度計算方法について確認するのが良いです。
ただこれだけは確実に覚えておきたいのは、「退職所得の受給に関する申告書」は必ずもらうようにしましょう。でないと、納める税金が通常の場合よりも過大になります。
源泉徴収の裏技
今回ご紹介するのは給料を支払っている企業、または個人事業主の方で源泉徴収を行っており、従業員の人数が常時10人未満の場合に使える特例です。
上記で挙げた納期に関しては給料等を支払った月の、翌月10日までに源泉所得税を納めるとなっています。
もちろんこれが原則となります。しかし、今回のような従業員が常時10人未満の場合は納期を1年のうち2回、つまり半年ごとに納めるだけでよくなります。これが「納期の特例」というものです。
この特例を受けていると、その年の1月から6月までに源泉徴収した金額をその年の7月10日までに支払い(1回目)、次に7月から12月までに源泉徴収した金額を翌年の1月20日までに支払う(2回目)形になります。これにより毎月納めるために金融機関に行ったり、税務署に行ったりしていたことが必要なくなり、手間が省けます。
この納期の特例申請書の提出先は、給与等の支払いをする事務所や会社の所在地を管轄する税務署長になります。ぜひ活用してみてください。
おわりに
源泉徴収は経営者であれば誰もが避けては通れない税金です。しかし実は奥が深く、ちょっと見逃していただけでも追徴課税されてしまう恐ろしい税金でもあります。本業が忙しくあまり税金のことに関してまで手が回らない方であっても、今回解説した要点をしっかり押さえておくだけで調査の時に指摘されることがなくなるでしょう。
「どうだったかな?」と思った時には、この記事を読んで確認していただくと、バタバタせずに安心できますね。自分ですべて対応するのが不安という方はやはり税理士・会計士に相談してみると良いでしょう。安心して経営を安定させるためには、プロの手を借りて経営に集中できる環境も大切ですよ!
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