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経営者になると決めたら

同窓会や親戚の集まりなどで「今自分で会社をやってまして…」なんて言葉、言ってみたいですよね。子供の頃に多くの人が一度は夢見た「社長」という立場を実際に実現できている大人はどれくらいいるのでしょうか。大変そう、失敗したらどうしよう。そんな不安も手伝って中々勇気を出せない方もいらっしゃるのではないかと思います。そんな方こそ、きちんと準備をして取り組めば、その慎重さがプラスに働いて経営者としての成功も遠い夢ではないかもしれません。

本屋さんで起業や開業、事業の独立に関する著書の並ぶコーナーを見てみると、「思い立ったら勢いで始めてしまいましょう!」 「リスクばかりを顧みずにすぐに始めましょう!」といった煽り文句で起業への想いを後押しするものが多く陳列されていますが、果たしてそれで良いのでしょうか。

もちろん人には運という科学では計り知れない可能性がありますので、勢いだけの起業でも100%失敗するわけではありません。 しかしながら、やはり精神的にも経済的にも一定レベルの安心材料を持った上で事業をスタートさせた方が長続きするような気がしませんか?

自分の思い描くビジネスを立ち上げ、晴れて経営者となるために知らなくてはいけないポイントを以下にご紹介します。ご一読いただければ、経営者としての成功が一歩近づくことをお約束します。

起業のメリット・デメリット

経営者になれば、収入も増え、使える時間の自由も増え…とポジティブなことばかりが頭に浮かぶ方も少なくないでしょう。もちろん、雇用されている立場より 改善する条件も少なからずあるといえます。しかしながら、雇用されていれば当然確保されていたものもすべて自己責任になります。そんな起業した際のメリット・デメリットをご紹介します。

メリット

  • 自分のやりたい仕事を自分で創造していくことができる
  • 自分の努力で収入をコントロールできるようになる
  • 定年退職の心配がない
  • 一緒に働くメンバーを自ら選択できる
  • 自分の要領でビジネスを大きくも小さくもできる
  • (会社設立する場合)個人で事業をするよりも、法人としての信用度があがる
  • (会社設立する場合)節税のメリットがある
  • (会社設立する場合)決算の月を自分で決定できる

デメリット

  • 安定した収入を得続けられる保証はない
  • 失敗をしたら、それは自己責任となる
  • 社会的信用の構築が困難になる
  • 退職金・福利厚生といったものがなくなる
  • 借金の返済が親族にのしかかる場合もある
  • (会社設立する場合)赤字でも法人住民税の支払い義務が生じる
  • (会社設立する場合)社会保険(健康保険&厚生年金保険)への加入義務が生じる
  • (会社設立する場合)書類管理など事務作業の手間が増える

必要な費用

会社設立にかかる費用というと、膨大な金額をイメージして「先にお金を蓄えてから…」と足踏みしてしまう方もいます。特にお金は「先立つもの」というくらいですので、シビアに理解していなくてはならない事項です。絶対に必要な費用、少しでもそれを抑える方法、とそれぞれ理解するところから始めましょう。

設立登記に伴う費用

  • 定款に貼る収入印紙:40,000円
  • 定款の認証手数料:50,000円
  • 定款の謄本手数料:2,000円程度
  • 登記の登録免許税:最低150,000円(資本金が150,000円以下の場合は資本金の7%)

自分で設立手続きをするとなると、おおよそ250,000円程度必要となります。また電子定款を使用する場合には上記の40,000円が不要となりますので、代行業者に依頼すると30,000円ほど安く できます。よく「起業コストを抑えるために自分で登記をしてみた」といった記事を見かけますが、じつは代行業者に頼んだ方が安いのです。

資本金

資本金は平均300万円用意することが多いとされますが、簡単に資本金を決めてしまってはいけません。ポイントを押さえた適正な金額で、自分の財産となる会社を守りましょう。

  • 初期費用
  • 向こう3ヶ月程度の運転資金

これらは絶対不可欠な資金です。同時に、創業融資や消費税免税期間を見据えておくことも忘れないようにしましょう。これら以外に、忘れてしまいがちなのがパソコンの購入、ホームページ制作などの準備資金です。100万円以上必要になるケースも少なくない ので、予め用意しておくと安心です。業態にもよりますが、 すべてを合計すると数百万円~一千万円以上になることも多いでしょう。必要資金は頭の中だけで計算するのではなく、Excelなどに書き出して試算することをおすすめします。そうして作った費用項目を検討しているうちに、段々と企業の実感が湧いてくるでしょう。

どれだけ資金が必要なのか見当もつかない…という方は、中小機構に業種別の開業資金目安が公開されているので、自分のやりたい業種でどんな費用がいくらくらいかかるのか調べてみてはいかがでしょうか。

業種別開業ガイド|起業する|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

自分でやるか?プロに任せるか?

上記の通り、会社設立は自分でやるよりも代行業者を使った方が安くできます。 また、作業の中でミスや漏れがあっても、プロがチェックしてくれるのもありがたい点です。お役所言葉で書かれた案内や資料を参考にさまざまな手続きを進めるのは想像以上にストレスがかかる作業だからです。

気持ちよく幸先よく起業したいのであれば、自分は本業に集中し、周辺業務はなるべく専門家に任せてみてはいかがでしょうか。プロだからこそ早急に丁寧に、そして確実に準備を進めてくれるので安心につながります。バックオフィスが整うことで、本業の生産性も高まるでしょう。

公認会計士

公認会計士に依頼をすれば、提携の司法書士を介さずに設立業務を担当してもらい、そのまま設立後の税務の届け出も任せられます。銀行融資などをはじめとした資金繰りに関する事も対応してもらえるのが心強いです。一方で、格安で設立の準備をしてもらうには設立後の顧問契約を結ぶ必要が生じるケースが多いです。

税理士

税務の専門家といえば、やはり税理士です。司法書士や社会保険労務士に依頼することもできますが、それは部分的なサポートであり、税務に関するプロに別で依頼する必要が生じます。これまでにも会社設立のサポート経験が豊富な税理士を選ぶことで、ただ単に税務に関する助言だけでなくその他に気をつけておきたいポイントなどを教えてもらえることもあります。もちろん節税についてのアドバイスもしてもらえるでしょう。

社会保険労務士

法人設立をした際には社会保険・厚生年金・雇用保険などに加入する必要が出てきます。そんな時に、社会保険労務士のサポートがあると円滑に手続きを済ませることができます。しかしながら、こちらもまた部分的なサポートとなりますので社会保険労務士だけで会社設立に関する準備を完了させることはできません。

どの資格保有者もそれぞれの分野で専門家ではありますが、各々で得意とする分野、できることできないことがあります。事前にしっかりと比較をしてから依頼をするようにしましょう。

1週間で準備する手順全貌

ここまで、費用面や手続きの複雑さについて記述してきたので、「1週間で会社設立なんてできるわけがない!」とお思いの方も多いと思います。しかし、上記の準備を段階に分けてきちんと順序良く進めていけば、1週間で設立することも決して夢ではありません。それでは具体的にどのようなステップで進めていけばよいのでしょうか。

【ステップ1】手続きに向けて準備しておく項目

商号

いわゆる会社名です。インパクトがあり、覚えやすく発音しやすいものが良いでしょう。会社法上NGな名前もあるので予め決めた上で調べておくとムダがないでしょう。

事業の目的

自分の興そうとしているビジネスの目的です。「何をどうしてマネタイズしていくのか」をきちんと考えておきましょう。

本店所在地

最近ではレンタルオフィスやコワーキングスペースなどもあり、自宅以外にも選択肢が増えてきました。定款に記載する必要がありますので、早めに決めておきましょう。

資本金

あなたの株式会社の元手となるお金です。上記の通り、最低3ヶ月分以上の運転資金を見込んでおきましょう。

事業年度

免税期間を長くしたり、住民税の均等割支払額を抑えたり、という効果がありますのでタイミングに関しては熟考しましょう。依頼する税理士の業務スケジュールも考えておくと相談しやすいと思います。税理士の繁忙期から外れるように設定しておくと、細やかな対応を受けやすくなるからです。

印鑑4種

株式会社を設立し登記する時に、登記書類や定款などに印鑑が必要となります。いざ会社がスタートすると用意する時間が取れなくなることも多々あるので、こちらも早めに用意しておきましょう。

印鑑証明書

定款の認証時と登記の際に必要となります。印鑑と同様早めに用意をしておきましょう。

設立に伴う費用

最初に書いたとおり、設立に伴って決まった金額が必要となります。これらがショートしてしまっては本末転倒です。きちんと余裕を持って用意しておきましょう。

★会社をPRするツール

上記のように必須ではありませんが、ホームページやパンフレット、ブログの開設など会社の紹介につながるツールを用意しておくことも大切となります。現代ではほとんど人がインターネットを通じ自分の知りたい情報を得ますので、しっかりとしたホームページを作り、対象となるお客様が「ココだ!」と感じるようなアピールができるといいですね。

【ステップ2】定款の作成と認証

定款、と聞いただけで難しそうですが、準備するにはいくつか方法があります。もちろん、先に述べた取り税理士や公認会計士といった専門家に任せるのがオススメですが、モチベーションが高い今こそ自分でトライしてみるのもいいかもしれません。以下に2通りの方法をご紹介します。それぞれ認証の方法も異なりますのでご注意ください。

自分で1から定款を作りたい方

穴埋め形式で19の項目を埋めて作ることができます。様々なホームページでMicrosoft Word形式・Excel形式のものを無料配布しているので自力で頑張ろうと言う方は使ってみましょう。ペーパーで定款を作成した場合には公証役場への提出が必要となりますので注意しましょう。

電子定款を使用して時間と4万円をセーブしたい方

電子定款を使用すれば、収入印紙分の4万円を抑えることができます。複雑な操作は要りませんので、時間に余裕があり、意欲のある方はトライしてみてもいいでしょう。電子定款を作成した場合には、公証役場へ足を運ぶ必要はなく、インターネット上で提出ができるので便利ですね。

【ステップ3】登記書類の作成

定款作成が終わったら、いよいよ登記の作成です。本格的に自分の会社が出来上がるイメージが湧いてくる頃です。そんなに難しいことはないのですが、漏れがあると面倒なことが増えるので慎重に進めていきましょう。

資本金の払込証明書

定款で記載した資本金額がきちんと入金されていることを証明する書類です。

発起人の決定書

本店所在地が発起人が同意をして決定されたことを証明する書類です。

資本金の払込証明書

定款で記載した資本金額がきちんと入金されていることを証明する書類です。

印鑑証明書

複数人役員を設ける場合には、全員の印鑑が必要となりますので注意しましょう。

株式会社設立登記申請書

法務局に設立登記の申請を行う際に使用する書類です。

登録免許税貼付用台紙

法務局に納める登録免許税を貼る用紙を指します。

印鑑届出書

会社のの印鑑証明書です。銀行口座開設た税務署への届け出に必須となりますが、設立登記後にしか作れませんので注意しましょう。設立の段階で必要なものではありませんが、この段階で用意しておくと便利かと思います。

登記すべき事項を保存したCD-R・USBなど

登記事項をまとめ、デジタルデータとして保存しておけば必要時にすぐに閲覧・修正ができるので便利ですよ。

【ステップ4】株式会社設立登記

上記の書類が整ったら、法務局で登記に移ります。この法務局を訪れ申請した日が会社設立日となりますので、この日を大切にしたい方は日を選ぶといいかもしれません。書類に不備がなければ、このまま提出し1週間程度で受領されることになります。提出には以下の3通りがあります。

法務局に出向いて提出する方法

一番実感が湧きやすいかもしれません。その他の事でてんやわんやでなければ、足を運ぶといい記念と思い出にもなります。対面で提出ができるので、その場で不明な点を問い合わせることもできるところがメリットかと思います。

郵送で提出する方法

言わずもがなの方法です。お忙しい方はこの方法をとってもいいかもしれません。

オンラインで提出する方法

味も素っ気もない、という点を除けば一番合理的な方法です。好きなタイミングで自分の都合に合わせて提出できるのがメリットですね。

【ステップ5】開業の届け出

会社の登記も終わったし…と一息つきたいところではありますが、それで終わりではありません。最後まで気を抜かずに完了させましょう。以下の提出書類が不備なく受領されれば、これまでの努力が実ってついに開業です。

法人設立届出書

税務署に、自分が設立した会社の概要を伝える書類です。都道府県や市区町村にも地方税を納めるために開業届として必要になります。

青色申告の承認申請書

青色申告をしておくと、税制上メリットとても大きいので必ず提出しておきましょう。

給与支払い事務所などの開設届出書

これがないと、従業員の給料などが会社の費用として計上できません。忘れないようにしましょう。

源泉所得税の納金特例承認に関係する申請書

提出することで源泉徴収の支払いを年2回に分け、創業後の負担を軽減する事ができます。

給与支払い事務所などの開設届出書

これがないと、従業員の給料などが会社の費用として計上できません。忘れないようにしましょう。

労働保険 保険関係成立届け

従業員を雇う場合には必須となる労働保険に関係する届け出です。その他、従業員雇用の予定がある場合には、労働保険概算保険料申告書、雇用保険適用事業書設置届、雇用保険被保険者資格取得届も併せて必要となります。

健康保険・厚生年金保険新規適用届

こちらの従業員を雇用する予定がある場合には必須となる社会保険に関係する届け出です。その他、従業員雇用の予定がある場合には、併せて健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届や健康保険被扶養者(異動)届についても確認しておきましょう。

いかがでしたか?

ハッキリ言って素人が1週間ですべて理解して用意するのは至難の業だと思います。こうやって体系立てて考えてみると税理士/公認会計士の存在のありがたみを感じますね。安心してドタバタせず準備をして会社設立をしたい、と考える経営者の方にはぜひとも専門家に任せての準備をオススメ致します。

ここまででも既に息切れの方も少なくないと思いますが、ここからが会社経営の本番です。適切なアドバイスをくれる専門家を味方につけて、自分の会社を成長させていきましょう。会社はいわばあなたの子どものようなものです。会社を育てていく上で必要となる投資はケチらずに安心料と思うこともとても大切です。

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